あの人は、趣味がこうじた内職で、リボンやラッピング用品をよく使っていた。

あるとき、地方に越してすぐの小学生のころ、東京の秋葉原まで来て、いきなり四谷のリボンの問屋にお使いに行け、と言われた。

なんでそんなことをしなければならないのかわからず、というか自分の買い物は自分ですればいいじゃないかとか、間違ったものを買ってきたと言ってまだ叱られるのもいやなので、一緒に行けばいいじゃないかなどと抗弁したものの、またヒステリックにいろいろ言われて、半べそかきながら出発した。

ところが、着いてみたら問屋は休みだったのである。

さあ、ウソをついているのだろうと叱られるのか、休みでリボンが変えなかった八つ当たりをされるのか、もう怯えは最高潮である。

が、秋葉原に戻って
「休みだった……」
と言ったところ、意外にも
「あ、そうだったわね」
で、終わった。

もっと成長してから思ったのだが、子どもを一人で買い物に行かせている隙に、あの人は浮気でもしていたんではなかろうか。そうでなければ、あのあっさりした物言いは、ありえない。

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