紹介文のほうが/だけが、
魅力的なのかもしれない。

 主人公のドイツ人ヴォスは、新しい地平を求めてプロシアからオーストラリアに渡ってきたものの、風変わりな「よそ者」として疎外され、誰からも相手にしてもらえない。アングロサクソンが権力の中枢を握っているオーストラリアでは、彼は社会的にも精神的にも、文字どおり孤立し、外側にはじき出されている。
 ヴォスは思索的な人間だが、同時に自らの中に巨大な、いわくいいがたい空白を抱え込んでいる。「何か圧倒的なものを発見する」探索の夢にとりつかれており、夢遊病を抱えている。そして彼は自らの内的空白を、オーストラリア大陸内陸部に広がる地理的な空白に重ねるように、自ら主宰した危険な探検の途につくことになる。
 シドニーの街で開催された探検壮行会の会場で、彼は一人の若い女性と知り合う。彼女もまた別の空白の中にいる。薄っぺらで虚飾に満ちたシドニーの上流階級の世界に、どうしても自分を溶け込ませることができない。誰に対しても心を割って話をすることができない。美しい聡明な女性だが、まわりからは「よくわからない気取った人」として敬遠されている。二度ばかり十九世紀的にまわりくどい会話を交わしたあと、彼女とヴォスは互いの抱えた空白を静かに重ね合わせることができるようになる。しかしその重ね合わせを明確なかたちにする術を二人は持たない。
 ヴォスは自分が彼女を愛していることに気づく。しかし彼はより大きな空白に引きすられるように、荒れ果てた大陸の内部へと向かう。そこには選択の余地はない。何人かの、それぞれにヴォスを夢見る「神」と見立てた信奉者たちが、探検隊に加わるが、やがて彼らは避けがたい破滅を迎えることになる。飢えと渇きが容赦なく彼らを襲い、より長い夢を見続ける先住民たちが、ヴォスの西欧的に屈折した「神性」を破壊し、沈黙のなかに吸収していく。
あと、個人的に翻訳者が、気に入らない。
この紹介文を書いた作家が、
翻訳してくれてたら、いいのに。

コメント

にゃー
2006年11月1日16:26

リンクありがとうございます。

なぜなのかしら?と、首をかしげながら(笑)相互にさせて頂きます。(^.^)

ほとんど削除してしまっていますが、宜しくお願いします。

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